京都の涼体験、保津川下り(2)

エキサイティングな体験を支える船頭

 

英単語を随所に混ぜた、リズミカルなトークで旅人たちを和ませる森田さんは、船頭になって20年のベテラン。約120人が在籍する保津川下りの船頭、その特殊な仕事について教えてくれた。「父親もおじいちゃんもみんな船頭、5代目まで続く家もあるぐらい、保津川周辺の人たちの間で代々受け継がれてきた仕事です。25年ほど前から一般公募が始まり、縁のなかった僕は自分で応募しました。それまで新人船頭になるのは、船頭の息子や兄弟、親戚、知人などがほとんど。船頭の推薦がないと就けない仕事でした。」現在でも、なりたい誰もが応募できるわけではなく、応募できるのは亀岡市・南丹市八木町に住んでいる、もしくは移住予定のある人に限られている。「この土地に暮らす人でないといけない理由は、自然を相手にする仕事だから。台風や大雨で川の航路が塞がれた時、すぐに駆けつけて作業できることが必須条件。保津川の自然を見守り、その厳しさとも共生する仕事なんです。」

保津川が仕事場である森田さん、15年ほど前から川の環境保全活動にも積極的に取り組んでいる。「ゴミ掃除を定例的にしたり、ほかの団体に呼びかけたり。美しい川を守りたい一心で活動を続けているうちに、企業や行政の協力を得られるようになってきました。」観光都市だといっても、まだまだ環境への意識は完璧だといえない嵐山。安全で楽しい川下り体験を提供する一方、保津川の環境保全を訴えていくことも船頭の仕事なのだ。

春や秋の忙しい時期には、1日100隻が出動する人気ぶり。下っては電車で戻って…を繰り返し、1日4回船上することもある体力、気力ともにハードな船頭の仕事。基本は、舵とり、櫂ひき、竿さし役の3人1組(水量によって4・5人になることもある)。「チームワークがとても重要なので、1年間は同じメンバーで船を操作します。せまい渓谷を縫うように進む繊細な技術など、日本特有の文化を広く伝えていきたいです。」

船頭の役割(イラスト上部から)
●舵とり:船の後方で、船の進路を決める
●櫂ひき:櫂という道具で船を前進させる
●竿さし:川底に長い竿をさして前進させる、方向の調整もする

▼森田孝義(船頭)
25歳の時に、船頭の道へ。学生時代にラガーマンとして活躍した体力と明るい人柄で仲間から慕われる、若手船頭のリーダー。「NPOプロジェクト保津川」の理事を務めるなど、環境活動にも情熱を注ぐ。


一隻の船に込める職人の情熱

  

全長12m20cm、強化プラスチックで基礎を形づくり、杉の木の枠を合わせた30人乗りのシンプルな船。1隻にかかる製造日数は45日〜50日、新調するのは1年に1〜2隻。広い工房で黙々と、船と向き合う山内さんは元船頭だったが、先輩大工の引退を機に転身した。「昭和45年ごろまで木造でしたが、今は強化プラスチックという優れた素材を使っています。船底の厚みは、わずか1cm3mm。水流で湾曲するように厚すぎはダメ、薄すぎると割れて浸水するのでこれもダメ。ベストな厚みや角度で船を仕上げます。」現場を知る船頭の要望にも耳を傾け、船や櫂を一から作る。山内さんの集中力は、安全に嵐山までお客さんを運んでほしいという気持ちによって保たれている。

▼山内博(船大工)
亀岡生まれ、亀岡育ち。もともと船頭だったが、8年前から船大工になる。今までの船大工が作ってきた船の構造を観察し、ほとんど独学で船づくりの技術を身につけた。夏の暑さ、冬の寒さを愛犬・ぎんちゃんが癒してくれるそう。

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