“曖昧さ”に宿る京町家の魅力

機能性やデザインの美しさから、海外からも注目を集める京町家。それに魅せられた一人のアメリカ人がいる。町家改修の建築家として、現代の生活と伝統を融合する彼の目に、京町家はどう映るのか。


京都に住まうジェフリー・ムーサスさんは、町家建築に魅せられたニューヨーク生まれの建築家だ。今から約20年前、マサチューセッツ工科大学(MIT)の大学院で建築を学んでいた頃、授業のスライドでみた京町家の街並みに興味を持った。
来日後、日本の現代建築を代表する二つの事務所などを経て、たどり着いたのは「中村外二工務店」。茶室などに用いられる数寄屋建築を手がける京都の有名な工務店だ。幸運なことにそこで働くチャンスを得たジェフリーさんは、もう一つの幸運に出会う。築90年の町家だ。ジェフリーさんが「京都の両親」と慕う家族が、使っていない京町家を直して住んでもいい、と提供してくれたのだ。長い間使われていなかったその町家は、まるでお化け屋敷。工務店の大工さんたちに、片言の日本語で尋ねながら、町家の修復を行った。「あの経験が、日本でのキャリアの大きな土台となりました」とジェフリーさんは語る。

 

その後、ジェフリーさんは自身の事務所を立ち上げ、京町家建築を知る建築家として活躍している。
「京町家の魅力は、曖昧な空間を多く抱えているところです。例えば縁側。壁がないので家の中ではないが、屋根があるので外とも言い切れない。このような場所があるからこそ、自然とともに暮らすことができる。これは日本人固有の考えですね」。ジェフリーさんは続けていう。「京町家には、世界中どこを探してもないような驚くほどたくさんの技や文化が家屋に息づいてます。そんな京町家も最近は減少傾向にあると危惧されていますが、わたしは、京町家は形を変えながら今後も残っていくと思っています。かつては、町人の住居でしたが、近年ではカフェや店舗として利用され、最近ではゲストハウスとしても多く利用されています。1200年の年月をかけて蓄積されてきた文化ですから、受け継がれるべきだと思います」。


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和紙の壁・照明:堀木エリ子さん作

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デザイン:Design 1st + TOMURO Atelier


  • Geoffrey P. Moussas(ジェフリー・ムーサス)
    建築家。Design 1st代表。ニューヨーク生まれ、マサチューセッツ工科大学大学院建築学科修士課程修了、1994年来日。日本の伝統建築に魅せられ、京都を拠点として町家の建築改修をはじめ、寺院、戸建住宅、店舗設計など国内外で活躍している。
    http://www.design1st.net/en/



掲載されている情報は2017年2月時点のものです。

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